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Event Report

2021.01.06

【イベントレポート】アシックス×ファミリア「異業種で取り組む商品開発、可能性と未来」

クリエイティブとビジネスが交差するトークイベント「CROSS」の第4回目が、12月16日にKIITOにて開催されました。
テーマは「異業種間で取り組む商品開発、可能性と未来」。

ゲストには、1949年に創業して以来、スポーツシーンの最先端を走り続ける株式会社アシックスの代表取締役会長CEO尾山基さんと、1950年に誕生したベビー服の代表的ブランド、ファミリアの代表取締役社長でクリエティブディレクターの岡崎忠彦さんをお迎えしました。第2部ではKIITOにオフィスを構える有限会社りすの編集者、竹内厚さんが進行を担当しパネルディスカッションが行われました。

前半はアシックスの先進的な技術を活かしたコラボレーション事例と、ファミリアのクリエティブなプロジェクトをご紹介いただき、後半のパネルディスカッションでは、子どもの教育やまちづくりに至るまで、お二人ならではの幅広い視点で、企業やクリエイターが担う役割やコラボレーションが持つ可能性についてお話いただきました。

コラボレーションは掛け算

2002年に誕生し、世界的な人気を誇るアシックスのスニーカーブランド「オニツカタイガー」は、様々な分野とのコラボレーションが実現しています。2003年には映画「キル・ビル」の劇中で主人公が履いた黄色いスニーカーが大ヒット。その後もジバンシイとのコラボレーションにより発売された革製のスニーカー「メキシコ 66 GDX(MEXICO 66)」、建築家の隈研吾氏やアパレルブランド「ANREALAGE」との協業など、アシックスの技術力にクリエイティブな視点を掛け合わせた商品を発表してきました。「コラボレーションは掛け算。それぞれの分野で培ってきた強みが掛け合わせることで高品質の商品が生まれ、共にものづくりを行うことで相互のブランド価値が高まる」と尾山さんは語ります。また、明治時代に開港しハイカラな文化が育まれてきた神戸には、 “下駄”でない文化を受け入れ普通の暮らしの中にテクノロジーを融合させていく土壌があるのではないかと言います。ファミリアとのコラボレーションにおいても、共に神戸で創業した企業であること、品質を第一に考え商品開発を行う企業であるという共通点が協業の決め手になったようです。

子どもは偉大なクリエイター

2011年にファミリアの代表取締役社長に就任した岡崎さんはデザイナー出身。企業理念を「子どもの可能性をクリエイトする」と一新し、様々なアーティストとの協業プロジェクトを手がけてきました。テキスタイルデザイナーの鈴木マサル氏、グラフィックデザイナーの北川一成氏など、世界的に活躍するクリエイターとコラボレーションすることで子どもやファミリアの社員をはじめ見る人たちの柔軟な発想力を養い、子どもたちの未来の定番を作りたいと言います。2018年に旧居留地に移転オープンし、クリニックやレストランを兼ね備えた本店は、世界的なアーティスト名和晃平氏が店舗デザインを手がけています。また、子どもたちが描いた作品を生かしたプロダクトを作ったり、保育事業にはアート教育を取り入れるなど、「子どもの可能性をクリエイトする」ためのプラットフォームを構築しているのだと言います。「企業が子どもとのコラボレーションを重ね、日常化すれば日本の企業はもっとクリエイティブになるし、新しいカルチャーが生まれ育っていくのではないでしょうか」と語ります。

新たなカルチャーへの挑戦

2013年からスタートした両社のコラボレーションは、岡崎さんによる熱いプレゼンテーションがきっかけだったそうです。その情熱やファミリアの品質の良さから、「掛け算の商品が作れそう」だと考えたという尾山さん。岡崎さんは協業することで「アシックスのものづくりに対する姿勢から学ぶことは多く、自社のアップデートにつながった」と言います。2020年9月に発売した子ども向けのフォーマルシューズ「Dress & Dash(ドレスアンドダッシュ)」は、アッパーには本革を使用してフォーマル感を演出し、ソールは柔らかく動きやすい構造になっています。アシックスの研究から得た知見を生かして、革靴だけれども軽いはき心地を実現し子どもの成長をサポート。本格的なフィッティングを行う付加価値と、ファミリアが元来持っている百貨店売り場での三世代消費の効果もあり、相場に対しておよそ2倍の価格設定にも関わらず売り上げが伸びています。革靴は固くて子どもの足にはあわないというイメージからの脱却を図り、子どもの靴の世界に新しい文化を確立しようとしています。

クリエイターが育つ、次世代のための街づくり

これからの神戸の企業とクリエイターのあり方について、尾山さんは「お客様はクリエイターの作ったものに新しさを感じる。企業には経営的な視点とクリエイティブな視点の両方のスキルが必要」だと語ります。また、岡崎さんは神戸の街そのもののブランディングに言及。「海と山の近さなど、神戸が持っているローカルとしてのよさを活かし、何のため、誰のために街をよくしていくのかを改めて考える時期。次世代のために暮らしやすさや教育などに特化して、他都市では得られないものを打ち出していきたい」と提案します。最後に、今後の展望を伺ったところ、「これまでを振り返ってみても、ものを売るためにはクリエイターの役割は重要。ブランドを愛し共鳴してものづくりに励むクリエイターを育てる活動などを手がけてみたい」と尾山さん。岡崎さんは「子どもたちがアートやカルチャーを読解する力を身につけて、なんでもある世の中だからこそ、ここにしかないものを感じ取る力を身につけてほしい」と、次世代を生きる子どもたちへのメッセージであると同時に感性を育む街づくりこそがクリエイターを生み出すのだという知見を得る機会となりました。