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2020.03.23

森の地産地消の仕組みづくりを六甲山から

SHARE WOODS 山崎 正夫

森が手入れできるように、木材に価値をつける

神戸市が防災のために伐採している市有林の樹木(クス、コナラ、シイなどの広葉樹)を有効活用できないかとの相談を受けたのが2014年のこと。市有林は市有財産のため市場に流通させることは難しく、現在は神戸市役所1号館1階にあるベンチや長田区役所の案内板など公共的な施設への活用を進めています。

長田区役所案内板

 

六甲山材の木製品を一般消費者に届けるために民有林と取引ができないかと考えていたところ、山林を地域の財産として手入れし続けている「上唐櫃」(神戸市北区)という地域組織があることがわかりました。スギやヒノキなどを間伐しているのですが、樹齢50年程度のスギでも市場では搬出費用さえ捻出できないという厳しい現実があり、丸太が切り捨てたまま放置されてることも知りました。

それならば、わたしたちがこれらの間伐材を山で直接仕入れて、デザインすることによって価値をつけ、せめて市場の価格で丸太を買うことができれば経済活動として循環させることができるのではないか。そんなふうに考え上唐櫃産のヒノキやスギで様々な商品開発を始めました。

 

六甲山鉛筆を通して、ストーリーを伝える

切り出した丸太を加工にするにはその手前で加工しやすいように製材にする作業が必要です。その製材所をなんとか神戸市で1軒見つけました。その製材をどこに保管するか考えていたところ、兵庫区にある船舶用の木材加工業「マルナカ工作所」が工場を畳むと聞き、その工場跡を借りることにしました。その製材をどこに保管するか考えていたところ、兵庫区にある船舶用の木材加工業者が工場を畳むと聞き、その工場跡を借りることにしました。そして単に保管するだけでなく、木材加工の拠点にできないかと考えました。というのも、兵庫区にある兵庫運河一帯はもともと船を造るための外材の輸入基地で、木材加工業者が集積していた場所でもあったのです。その資源をもう一度復活させ、この地を元気にすることができないかと考えたのです。現在、その工場跡地を拠点に3人のプロダクトデザイナーが、六甲山の間伐材を使ってテーブルやチェアなどの木製品に加工し、販売しています。

また、より多くの人に手に取りやすい商品が開発できないかと考えて生まれたのがスギを材料にした六甲山鉛筆です。2018年末に発売して以降、文房具店だけでなく雑貨店などでも扱ってもらっています。原木丸太は市場に持っていっても全て買い取られるわけではないのですが、私たちはその年に組合員さんたちが間伐した丸太はすべて購入しています。売れ残るような小さな木材も加工できる商品として思いついたのが鉛筆です。販売するときには、鉛筆を購入したお金が山の手入れに回り、ひいては地域を守ることにつながるという説明もつけて伝えています。

六甲山鉛筆

 

日本の森林を元気にするために

わたしはもともと欧州の木材メーカーの輸入代理店で働いていました。そこで地域の森林組合の方と話す機会があり、林業をめぐる厳しい現実を知りました。日本の森林に手を入れ、山を守るには、地域にある森林を地域の人で使う地産地消が必要だと思い至り、週末の活動としてカホンプロジェクトを始めました。カホンは中南米で生まれた箱型の打楽器です。このカホンを手づくりし、自ら音を鳴らし、ペイントしてアートする活動です。

その後、日本の森林資源を無駄なく有効に流通させ「森と消費者を繋ぐ仕事がしたい」との思いから独立し、輸入材から国産材まで扱うシェアウッズを立ち上げました。六甲山から出た木材を地産地消する取り組みを広げるためにデザイナーとさらにネットワークを広げていくとともに、この取り組みを全国に広げていくことで地産地消の取り組みが全国各地で根付いてくれればと願っています。

町工場がいきづく町並みを守りたい

兵庫区で引き継いだマルナカ工作所の周辺にはかつて、船大工や鉄工所や洋家具の工房がたくさん並んでいた町でしたが、後継者がおらずどんどん廃業していっています。町工場で働く人が集まる喫茶店なども含め、この町並みを残していきたいなと思っています。工房に「マルナカ工作所」という名前を残したのも、港町ならではの工場街がかたちづくってきた歴史を継承したいという思いからです。廃業せざるを得ないような町工場がこれからも出てくれば、ものづくりをやってみたいという若者につなぐ仕組みも作ってみたいですね。