2022.06.26
Vol.1
老舗酒蔵「安福又四郎商店」×モノとヒトをつなげるデザイナー「すみかずき」
株式会社安福又四郎商店:
1751 年創業。灘五郷の御影において、寒仕込みでごく少量を⽣産する⼿造りの酒蔵。代表銘柄は、「⼤⿊正宗」。食事と合わせて楽しめる〝食中酒〟としての日本酒を軸に、灘の地酒を造り続けている。
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Branding Producer/Designerすみかずき:
1991年兵庫県神戸市生まれ。ローカルを『らしく』醸す会社である「合同会社シェアローカル」を立ち上げ、企業ブランディングや商品開発、コミュニティ運営などデザインを広域的に捉え活動中。
STORY
神戸の老舗酒蔵・安福又四郎商店は、お酒を飲めない人でもお料理と飲み物のペアリングを楽しめる新商品を開発していた。老舗の酒蔵イメージとは別軸のロゴとパッケージデザインを求める中、イメージ通りのデザイナーと出会えたのが神戸クリエイターズノートだった。安福又四郎商店の安福愛さんと、デザイナーのすみかずきさんにお話を伺った。
−なぜ、神戸クリエイターズノートで新商品のデザイナーさんを探されたのでしょうか。
安福さん:これまでお願いしていたデザイナーさんは、私がある程度イメージしたものを形にしてくださっていました。しかし今回の商品は日本酒ではなく、お茶です。全く違う方向性から新しい世界観をつくりたいと考えました。一方で、酒米・山田錦のこと、灘の酒蔵を肌で感じておられる方がいいという希望もありました。実は神戸クリエイターズノートで探す前に、神戸のデザイナーさんそれぞれのホームページも拝見したのですが、尖ったデザインが多く、実際の商品をどうデザインしてもらえるかのイメージが湧かなかったんです。そこで神戸クリエイターズノートで探すことにしました。同じフォーマットで作品事例が並んでいるため、比較検討がしやすかったですね。
−たくさんデザイナーさんがいらっしゃる中から、すみさんを選ばれた理由を教えてください。
安福さん:今回の依頼はロゴの作成がメインだと考えていたので、文字やマークの扱いが丁寧だと感じたすみさんの作品事例に目が留まったんです。神⼾市出⾝ということ、ローカルや農に根付いたお仕事もされていることもポイントとなり、すぐにお電話してお会いする約束をいただきました。
すみさん:直接お会いして、今回のプロジェクトのお話をうかがいました。でもほとんどは安福又四郎商店さんのお酒「紅天女」のお話だったかもしれないです。素敵なパッケージデザインに感心していたところ、ブックデザイナーの祖父江慎さんがデザインされたということで納得しましたし、その着眼点に心が躍りました。
−すみさんがお仕事をお引き受けになるときに大事にされていることはありますか。
すみさん:デザインで嘘をつきたくないので、物づくりにこだわっているかどうか、そこに想いがあるかどうかを大事にしています。安福又四郎商店さんの場合はこだわり尽くされていたので、断る理由はありませんでした。
−はじめてお仕事をご一緒される中、スムーズにやりとりはできたのでしょうか。
安福さん:初回打ち合わせ前にヒアリングシートをいただいたんです。商品のことや5年後10年後のこと、店頭に並んだときにどう見せたいかなどの質問項目でした。雰囲気でデザインするのではなく、何を形にして欲しいのかを丁寧に確認いただいたことに安心感がありました。
すみさん:ヒアリングシートに書いていただいた言葉から、方向性をフォーカスしていきビジュアルに落とし込むので、この段階からデザインははじまっています。コンセプトを立てて、まずロゴを提案しました。
安福さん:でも最初の案は、ピンとこなくて考え直していただいたんです。
すみさん:別の方に依頼されていたイラストと組み合わせるロゴがご依頼内容でしたが、まだイラストができていなかったこともあり、イメージを完全に捉えられない状況でした。
安福さん:イラストが上がってきてからのすみさんは本当にお見事でした。最初の案からコンセプトは変わっていないにも関わらず、表現がガラリと違いました。現行デザインのようなものをご提案いただくとは想像もつかなかったです。さすがだなと思いました。
すみさん:描き下ろされたイラストを見た瞬間、このイラストを生かすためにはデザインしすぎてはいけないなと。イラストを主役にすることを肝に考える中、最後にポンと出てきたのが今のロゴです。
−最初の案と全く違いますね。
すみさん:日本画の掛け軸がヒントになりました。掛け軸は、落款(落成款識の略、作者の署名・捺印である赤いハンコ)が押された瞬間に作品がグッと引き締まる。それを表現できたら、イラストが前面に出た完成度の高いパッケージになるに違いないと確信したんです。玄米茶88の、「循環」というコンセプトも表現に盛り込まれたロゴになっています。
安福さん:見た瞬間に、この案でいきましょう、と即決でした。
すみさん:ここからイラストとのバランスを整えるのが難しくて時間がかかりましたが、安福さんにパッケージの大きさや形、印刷の色の出かたなどもリアルタイムで共有していただき、期限までに完成させることができました。
−みなさんの想いや技術が結集した商品ということが伝わってきます。
安福さん:一過性のデザインではなく、長く浸透していくデザインになっていると思います。
すみさん:商品もデザインも細部にまでこだわると、必ず雰囲気に宿ります。玄米茶88は商品の中身自体も素晴らしいですし、安福又四郎商店さんのお酒のように長く愛されるものになるでしょうね。
安福又四郎商店の水出し玄米茶88についての詳細はこちら
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文章:梶本 佳世