2023.08.05
Vol. 24
マーケティング プロデューサー 時井 勇樹
KOBE CREATORS NOTE登録クリエイターの作品や活動への思いを紹介していきます。
|株式会社レヴァーク 時井 勇樹(ときい ゆうき)
1990年 兵庫県三木市出身。小学校の途中から高校までを静岡県掛川市で過ごす。大学進学を機に兵庫県に戻り、そこから現在に至るまで神戸市に居住し活動しています。
|マーケティングプロデューサーになるまで
ボランティアや慈善事業にとどまらず、持続して「売れる」ものをビジネスとして創り出すことが本当の地域活性や復興になると考えています。
大学時代に防災についてゼミの活動で学んだこと、東日本大震災の復興支援活動に取り組んでいたことの延長線上にいまの仕事があります。遡ると幼いころから私には防災ということが身近にありました。
三木市に住んでいた阪神・淡路大震災発生当時はまだ4歳。実際に自分が被災したという記憶はほとんど残っていません。その後に移住した静岡県では南海トラフ地震に備えた防災教育が熱心で、日常的に防災に関しての意識が高まりそれが普通の認識になってきました。そして神戸の大学に進学してからは、ゼミの活動で形のない価値やサービスを提供する「サービスマーケティング」を学び、また「防災」と向き合うことになります。
災害発生時にマーケティング活動でどう問題解決できるのか、というテーマに取り組みました。ラジオ関西さんからラジオ中継車の試験運用のプロジェクトの話をいただいたのは大きなきっかけでした。実際に神戸での震災の記憶をほとんど持っていない我々世代が災害に直面した時に何が必要か、水や電気などのライフライン、物資だけでなく情報収集や連絡手段はどうするのか、自分達の家族に改めて当時の様子を教えてもらったり、長田区で被災された方にも貴重な経験談を伺いました。
その活動を通して出場した「防災ラジオドラマコンテスト」では大学でラジオ中継車の運用を経験した私たちが10年後に実際に大きな震災に遭って、当時経験したことやそこで得た知識を復興に活かしていくというストーリーでした。結果は惜しくも2位の優秀賞でしたが、その翌年に東日本大震災が起こるのです。
|フィクションがノンフィクションに
ラジオドラマで想定していた10年後ではなく、翌年に災害が現実になったことでとにかくできることを始めました。まずは募金活動を開始して、地震発生2か月後に現地に入れるようになりまさに自分たちが学び運用していたラジオ中継車で臨時災害FM局を立ち上げるべくラジオ関西さん協力のもと情報が遮断されていた宮城県南三陸町に入り、被災地の方々にラジオで情報を届けることのノウハウを伝えるバックアップをしました。
(時井様よりご提供:在学中の募金活動の様子)
このような形で自分達が時間かけて培ったことで被災地の支援に繋がるとは誰も予期していませんでしたし、フィクションがノンフィクションになった瞬間でした。その後もとにかく自分たちにできることをやり続けました。その中で、ボランティアや無償の支援だけでは長期的に続けることが難しかったり、根本的な解決にはならないということも気づかされます。経済を回すことこそが被災地域が活力を取り戻し、復興になるのだと。
そこで大学卒業を機に起業し、最初は東北の被災地に儲かる仕組みを作ることを目標に事業を始動しました。その代表作と言えるのが気仙沼のサメ革を使ったAtelier Shark(アトリエシャーク)の作品です。
|継続した復興支援
サメの漁獲量日本一を誇る気仙沼で水揚げされた、ヨシキリザメの皮を原料にして作られている「サメ革マルチツールのワトソン君」。このアイテムは、日常生活の小さな困ったことをサポートしてくれるので日常を快適に過ごしてもらいたいということや、気仙沼を思い出してもらうきっかけにもなって欲しいという願いを込めて作りました。キーチャームとしていつでも持ち歩けていざという時に重宝します。
また、近畿大学の産学連携の取り組みとして、「もしもにいつも備える」というコンセプトで日常生活で必要なものが全部収まるバッグ「サメ革バディバッグPeg Minimal bag」を共同で商品開発をしました。今の大学生の世代は、東日本大震災の時には幼くて記憶がない世代です。この世代への啓蒙も兼ねて、災害時に役立つ商品の企画を考えてもらいました。必需品とはなにかの調査から始まり、身に着けやすい大きさの適正サイズなど学生が一生懸命考えたバッグです。学生達の最後までやり遂げる前向きな姿勢は初心を思い出させてくれました。学生と一緒にゼロから考えて形にしたこのバッグは、日常でも多機能で使いやすいバッグとしていつも身につけていられます。イレギュラーな災害時にも焦らずこれだけを持って避難することで、必需品を持ち出すことができる非常に便利なバッグです。
(ご提供写真:サメ革バディバッグPeg Minimal bag)
現在は、どちらの商品も気仙沼のふるさと納税の商品になっておりECサイトでも購入が可能です。
|プロジェクトについて
今は全国各地のお客様に声を掛けていただけるようになりました。マーケティングとプロモーションを行い、継続して売れ続ける商品の開発をサポートしています。印象に残るネーミングや、お客様を引き寄せる売り場づくりなどをご提案します。依頼者の持つ強みを活かした新商品や新ブランドの企画提案を行い、商品に合ったクラウドファンディングを選定するなどアイデアの起案から有効なPR手法まで余すことなく伝授しています。
|神戸で働くということ
BE KOBEのモニュメントは震災後20年をきっかけに「神戸の魅力は人の中にある」というメッセージが生まれたと思いますが、私もそれは肌で感じています。東京では、人より先に会社にフォーカスが当たります。5年でいかに上場するのかを考えて経営戦略を立てるので、どうしても会社の戦略が先行します。
神戸は東京に比べると、スモールビジネスが多いので、社長や社員の方とすぐに話せることなど人と人との距離が近いと感じています。神戸は、個人の能力や前向きな気持ちで仕事をされている方が多いので個人の熱量が感じられる距離感が気持ちいいなと思っています。
|今後の夢、理想
昨年、ツイッターで夢を語りTweetの投稿総数でギネス世界記録に挑戦するイベントに参加しました。明確なビジョンを宣誓することは意義があると思い、「サメといえば…と考えた時に、誰もに最初に思い浮かべてもらえるブランドになる!」と宣言しました。このイベントは見事ギネス世界記録が認定され、私も公式参加認定書をいただくことができました。
今後は、Atelier Sharkを多くの方に知ってもらうことはもちろん、神戸の街がもっと良い街になるように色々なことに挑戦したいです。ポイントに置いていることは、自分の基盤がしっかり固まっていることです。
自分の会社や私自身に余裕がないと、周りの会社にサポートすることはできません。自分が持っている知識や考え方を伝えていくと、更に自分自身もインプットしなければいけないと思いますし、良い循環をもたらしてくれると感じています。現場での商品企画の面白さが伝わらず浮かない表情をされている企業の方も、新しいアイデアや可能性に気づかれた時に表情が輝く瞬間があって、それは自分の思いが伝わったり、同じものを感じられた瞬間でもあるので、そこから私が本領を発揮しなくてはと力が入ります。
限られた予算で企画を成し遂げることや、風の向きを読み取るだけではなく無風の状態で、ここに風が来るなと感じられる感覚を研ぎ澄まして、継続して実働できる事業をこれからもサポートしていきたいです。
|URL
株式会社レヴァーク https://revearc.com/
合同会社Atelier Shark https://atelier-shark.com/
Twitter https://twitter.com/tokii_kobe
KOBE CREATORS NOTE http://kobecreatorsnote.com/wp/creator/yukitokii