Pickup Creators

2023.09.07

Vol. 25

作品で人と人を繋ぐイラストレーター

イラストレーター オオスキ トモコ

KOBE CREATORS NOTE登録クリエイターの作品や活動への思いを紹介していきます。

 

|イラストレーターになるまで

私に芸術に触れる機会を与えてくれたのは、祖母です。祖母は美術を専攻した小学校の先生で、幼少期に美術館へ連れていってくれたことを今でも鮮明に覚えています。
祖母のおかげで芸術への興味はありましたが、かつての私は「芸術」を職業とすることに対して、才能があるごく限られた人だけが成功し、多くの方の生活は安定していないのではというイメージを抱いていました。

父親が公務員の家庭で育った私にとっては、安定した生活を送ることがベースの考えにあり、将来芸術に関わる職業に就くことは敷居が高く、自分が抱くイメージを乗り越えられる自信がありませんでした。芸術は趣味で触れられたらいいと思っていました。

しかし興味のあるものは、芸術に関連したものばかりでした。大学へ進学する際、それぞれの大学の特色を調べていくうちに工業デザインに興味があったことが後押しして、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科に進学を決めました。進学を機に上京しましたが、就職活動がうまく行かず、本当に自分がやりたいことは何なのかをずっと考えて悶々としていました。
セレクトショップの販売員やインテリア雑誌の編集アシスタントを経験し、販売する立場よりも創り出すことがしたいという気持ちが強くなりました。時間はかかりましたが、くすぶっていた気持ちにようやく確信を持つことができました。そこから、働きながらイラストの勉強をしてイラストレーターとして活動を開始しました。

 

|作品について

「食品でひく 機能性成分の事典」(女子栄養大学出版部)中村宜督/著

真面目で少し難解な内容を分かりやすくイラストで伝えることが得意です。ジャンルとしては、「食」「健康」「教育」などのお仕事を依頼していただく機会が多いです。

作品は、クリエイターの思想や感情を表現したもので、多くの方に見てもらい、なにか心で感じてもらうことがやりがいに繋がります。それは仕事として依頼されたものでもそうだと思います。ただ、作品を大事に扱っていただける場合がほとんどですが、実際にはそうではないときもある中で、今の時代は作品を作るだけではなく、クリエイター自身が作品を守るための知識を持つ必要があると考えています。

「芝中学校・芝高等学校ポスター・カレンダー」(学校法人芝学園)2023年度版

イラストレーションなどの作品は「知的財産」です。私は2021年に、自分の知的財産のマネジメントに関する技能の習得レベルを公的に証明するための国家資格である、三級知的財産管理技能士という資格を取得しました。昨年はイラストの専門誌で著作権と契約についての記事を企画し、その記事のイラストも描きました。

「イラストレーション」2022年12月号(玄光社) 「改めて知る・考える 著作権と契約のキホン」

私と同じように考えられていたり、作品の扱い方に困っておられるクリエイターも多くいらっしゃるのではないでしょうか。私がSNSや雑誌などで発信する内容で、クリエイターが自分の作品を守るために勉強をするきっかけになってもらえたら嬉しいです。

 

|神戸はオシャレな文化が当たり前に存在している

神戸には2020年3月に引っ越してきました。神戸の街は、古い建築物を現代の形に合わせて大事に使い続けているところや、デートしているカップルが多く、パリの雰囲気に似ているなと感じています。私個人の意見ですが、港街で例えると、横浜はアメリカのような、神戸はヨーロッパを思わせるイメージです。
私は古くからの洗練された雰囲気のヨーロッパが好きなので、オシャレで趣のある神戸の街はとても魅力的です。
イラストレーターという職業を伝えた時の反応は、地域によって違いがあって面白いのですが、神戸の方に職業を伝えても「いい仕事しているね」と平然とした反応なので、身近に芸術がある環境なのだと感じています。良い意味で美的感覚に対して「神戸」というプライドも併せ持っていることも興味深いです。
ただ、私よりも地元の方のほうが暮らしている街である神戸のことをよく知らないという一面も感じています。外から移り住んだことで、ずっと住んでいらっしゃる方よりも気付くことや観察して見えてくることが多いのかもしれません。
神戸は海も山も近くにあるのが魅力です。創作することに煮詰まったときには、メリケンパークで海を眺めたり、布引の滝など、気軽に山へでかけてリフレッシュできるので心地よく暮らしています。

 

|KOBE CREATORS NOTEから生まれたクリエイターの横のつながり

神戸に引っ越して来た当初は、神戸出身の生駒さちこさんしか兵庫県には知り合いがいませんでした。しかもコロナの緊急事態宣言の期間ということもあり、生駒さちこさんとも直接お会いすることができず、新しい出会いを求めるには難しい状況でした。
幸いにも東京で引き受けた仕事が忙しく充実していたので、知り合いが少ない環境でもやり過ごすことができていました。少し仕事も落ち着いたころ、クリエイターも利用できる補助金の申請をする際に神戸市のウェブサイトを見る機会があり、KOBE CREATORS NOTE の存在を知りました。クリエイター登録をしたのが2020年の6月になります。翌年の2021年1月には、更に新しい出会いを求めて個展を開きました。

2021年1月19日(火)〜1月24日(日) 「とっちらかりのとも」(個展) 神戸・元町 Gallery Vie

ある日、武蔵野美術大学の先輩である星加ルリコさんをKOBE CREATORS NOTEの登録クリエイターの中で偶然発見して、個展への招待DMを送ったところ、個展にお越しくださったんです。これを機に星加ルリコさんからお誘いいただく機会が増え、いろいろな方に紹介してくださいました。2022年にはイラストレーターのミキタナカさんがKOBE CREATORS NOTEで私を発見して、「クロッキー会」に誘ってくださったことで、イラストレーターとして活躍されている方々とも知り合うことができました。思い返せば、KOBE CREATORS NOTEに登録したことがきっかけとなり、神戸市で活躍されるクリエイターと横のつながりを作ることができました。そのようなご縁に感謝しています。


|今後のやってみたいこと

今の私の名刺には、マッチ棒を2本描いています。昔からマッチの収集の趣味がありまして、かつては、カフェや喫茶店に「お土産」感覚で持ち帰っていたものが、大学生の頃には、マッチを収集することが目的になり、カフェや喫茶店を巡っていました。今では喫煙できる空間自体が減ってきているので、喫茶店にマッチが常備されていることは珍しくなってしまいましたが、マッチ箱のデザインや、手に入れた時の思い出がよみがえることに魅了されています。
兵庫県は、マッチの生産量が一位で、日本において90%は兵庫県で生産されています。ご縁があり兵庫県の神戸市に住んでいるので新たにマッチに出会うことはもちろん、イラストレーターとしてマッチに関わることができたらと思っています。夫の転勤で神戸に来て3年が経ちました。いずれは東京に戻る予定ですが、芸術文化が当たり前にある神戸の街で、イラストを通してより多くの人と出会い作品を届けていきたいです。

|URL

http://kobecreatorsnote.com/wp/creator/tomokooosuki
http://kobecreatorsnote.com/wp/creatorinterview/2962

PROFILE https://www.tomokooosuki.com/profile-1/
DANRO https://danro.bar/author_category/osuki_tomoko/
日常 https://www.instagram.com/tomoko_oosuki/
仕事 https://www.instagram.com/tomokooosuki/
趣味のマッチ集め https://www.instagram.com/tomono_match/
クロッキー会 https://twitter.com/kobemeetsillust/status/1686720592991367168


インタビュー場所: デザイン・クリエイティブセンター神戸(KIITO)