マッチング事例

2026.03.31

デザインの力で経営課題を解決。 企業とクリエイターのマッチング最前線レポート①

こうべ産業・就労支援財団

STORY

「デザインUPプロジェクト」の成功事例や取り組みの狙いを探るべく、こうべ産業就労支援財団を取材した。

「デザインなどを依頼したいけれど、誰に頼めばいいのかわからない」という企業。

「自分のスキルを、もっと企業の課題解決に役立てたい」というクリエイター。

そんな両者を結びつけ、神戸のビジネスシーンに新たな可能性を生み出しているのが、こうべ産業・就労支援財団が実施する「デザインUPプロジェクト」だ。

今回は、このプロジェクトの舞台裏を知る財団職員の藤岡氏に話を伺った。単なるマッチングにとどまらない「企業とクリエイターの良質な関係」はどのように生まれているのか。その仕組みと狙いに迫る。

 

「デザインUPプロジェクト」が始まった背景や意図を教えてください。

藤岡氏:

全国的にデザイナーを中心とする「芸術家・クリエイター」の就業人口が増えていますが、クリエイター市場は参入障壁が低く、幅広い年代が挑戦できる反面、稼げるプロは一部に限られています。デザイン都市KOBEで、クリエイターの更なる活躍を促すには、創作スキルだけでなく、ビジネスの視点も重要で、経営力の底上げや収益化につながる機会が望まれていました。

他方、中小企業にデザインの力を取り入れた経営改善を促す「デザイン経営」を推進する流れがあり、クリエイターの活躍の場を広げると同時に、デザイン経営の取り組みを進める支援策を考えました。

こうして生まれた企業×クリエイターマッチング事業では、「デザインUPプロジェクト」を推進しています。

改めて説明すると「デザインUPプロジェクト」とは、神戸市内の中小企業とクリエイターをつなぎ、デザインの力によって企業の価値を高めることを目的とした支援プロジェクトです。企業とクリエイターが協業することで、商品力・ブランド力・採用力・発信力などを高め、企業の成長につなげていくことを目指しています。

いわば企業×クリエイターの協働を促進する仕組みであり、地域の企業とクリエイター双方にとって新たな可能性を生み出す取り組みといえます。

 

「デザインUPプロジェクト」の流れを教えてください。

藤岡氏:

プロジェクトは大きく3つのステップで進んでいきます。

まず最初に行うのが、財団による企業へのヒアリングです。企業が抱えている課題や、実現したい方向性などを丁寧に整理し、どのようなクリエイターが必要なのかを明確にしていきます。

次にその課題をもとにクリエイターの公募を行います。ここで活用されるのが、神戸のクリエイターを紹介するプラットフォーム「神戸クリエイターズノート」です。このサイトに登録しているクリエイターに対して応募を募ります。

その後、企業に対する面談にて企画・提案を通じて、企業とクリエイターのマッチングが決定します。お互いが納得したうえで具体的なプロジェクトがスタートします。

最後のステップが、制作のフェーズです。企業とクリエイターが協力しながら実際の制作を行い、プロジェクトを進めていきます。財団としても、そのプロセスがスムーズに進むようサポートを行い、企業とクリエイターが安心して協業できる環境づくりに取り組んでいます。

また、本年度からはクリエイターの紹介体制も強化されました。クリエイターを企業に紹介する際は、神戸クリエイターズノートに登録しているクリエイターの中から選定する仕組みとなっており、これまで以上に積極的なマッチングが可能になっています。

 

 

企業側からはどのようなご相談が多いのでしょうか。

藤岡氏:

企業から寄せられる相談内容は実にさまざまです。代表的なものとしては「採用の応募が少ないため、自社の魅力を上手く発信したい」や「売上向上のために新商品を開発したいが、経験がなくどうしたら良いか分からない」といった声が多く見られます。

こうした課題に対して、クリエイターは採用ツールの制作やブランドデザインの構築、商品パッケージのデザインなどを通して企業の課題解決に取り組みます。単なるデザイン制作にとどまらず、企業の価値や魅力をどのように伝えていくかという視点で伴走するケースも多くあります。

これまでにマッチングした案件の内訳は、下記になります。

・ブランディング支援(WEB制作・リニューアルなど)8件

・プロダクトデザイン支援(新商品の企画・デザインなど)2件

・販路開拓・拡大支援(商品デザインやロゴ・パッケージデザインやランディングページ制作など)7

相談を寄せてくださる企業の業種としては、製造業が全体の8割以上を占めています。神戸には技術力の高い製造業が多く、優れた製品や技術を持ちながらも、それを効果的に伝える手段に課題を感じている企業が多いことが背景にあると考えられます。

企業側にとって初めての取引先を公募によって決定することに不安もあると思いますが、どのように解消されていますか。

 

藤岡氏:

このプロジェクトは、特定のクリエイターの営業活動を支援するものではなく、クリエイターを活用したことが無い中小企業と、活躍の場を広げたいクリエイターをマッチングするものです。そのため、何よりも重視しているのが「公平性」と「最適な組み合わせの実現」です。

もちろん、財団としては多くのクリエイターが企業とマッチングし、活躍の場を広げてほしいという思いがあります。その一方で、企業が安心してクリエイターを活用できる環境を整えることも重要です。

そのため、プロジェクトに取り組んでいただくクリエイターは市内で活動していることに加え、一定の実務経験やスキルを持つ方が中心となっています。また財団としても、クリエイターがより専門性を高め、プロとして活躍の幅を広げていけるよう、継続的な支援体制を整えています。企業にとっては費用負担が軽減されることで、クリエイター活用を試しやすい点も大きなメリットのひとつです。

また、企業とクリエイターがスムーズにコミュニケーションを取れるよう、プロジェクトの進行についても財団が適切にサポートしています。こうした体制によって、初めてクリエイターを活用する企業でも不安なく取り組んでいただいています。

 

企業側はどのような魅力を感じて活用されているのでしょうか。

藤岡氏:

実際に活用いただいた企業の方々にお話を伺うと、多くの企業が自社の魅力や強みの伝え方に課題を抱えていることが分かります。ただし、日々の業務に追われる中でそうした課題を認識していても、なかなか改善に取り組む時間が取れないという現実があります。そのため、デザインの力を活用することが後回しになってしまうケースも少なくありません。

そうした中で、このプロジェクトでは費用の半分を補助する仕組みがあるため「負担が軽減されるのであれば、クリエイターを活用してみたい」という企業も多く見られます。企業にとっては、デザインを経営に取り入れる最初のきっかけになっているケースが多いと感じています。

また財団が特に注目しているのは、プロジェクトが終了した後の動きです。実際にはプロジェクトが終了しても、同じクリエイターに継続して依頼する企業が全体の半数ほどあります。これは費用面だけでなく、クリエイターとの協働によって得られる価値を実感していただけている証ではないかと感じています。

企業とクリエイターが互いの強みを理解しながら協働することで、新たな価値が生まれる。そのような関係づくりを支援することが、このプロジェクトの大きな役割だと考えています。

次回は実際にプロジェクトに参加したクリエイターの視点から「デザインUPプロジェクト」に関わるメリットや、企業との協業によって生まれる価値について詳しくお話します。

 

こうべ産業就労支援財団
https://kobe-ipc.or.jp/

デザインUPプロジェクト
https://kobe-ipc.or.jp/design-up