マッチング事例

2026.01.06

「時間」と「回す」がつなぐ、セカンドブランドの新たなロゴデザイン

有限会社テンプル(Kobe Coffee Temple)×神戸を拠点に国内外で活躍するデザイナー&イラストレーター小越 将吾

STORY
創業から50年以上、三ノ宮で人々の時間に寄り添ってきた自家焙煎喫茶「Kobe Coffee Temple」。その店が次の半世紀に向けて挑んだのは、既存のイメージから一歩踏み出す“セカンドブランド”の立ち上げだった。コーヒーのある日常をどう言葉にし、どう形にするのか、その問いを共に探したのがクリエイターの小越将吾さん。こうべ産業・就労支援財団のマッチングをきっかけに出会った二人は、どのようにブランドの輪郭を描き、ロゴに込める思いを擦り合わせていったのか、お話を伺った。

 

プロフィール

有限会社テンプル 本店店長 田和佳晃さん

1972年から三ノ宮で暮らしに寄り添う自家焙煎喫茶店。厳選したスペシャルティコーヒーを店内で丁寧に焙煎し、オリジナルブレンドからストレートまで豆の個性をまっすぐ届ける。木の温もりが残る空間で、朝から夜まで思い思いの時間を過ごせるのが常連に愛される理由に。またオリジナルのドリップバッグも揃い、店の香りを自宅で楽しめるほか、プレゼントとして購入できるのも嬉しい。丁寧な焙煎と飾らない空気感が、神戸の街と共に息づくコーヒーのある日常を作り出している。

 

小越 将吾さん

神戸を拠点に国内外で活躍するデザイナー&イラストレーター。神戸芸術工科大学でビジュアルデザインを学び、TBSラジオ「ACTION」の番組ビジュアルやCreepy Nutsのグッズデザインなど、アーティストグッズやCDジャケット、フライヤー、アニメーションまで幅広く手掛ける。デザインを通して“人とのコミュニケーション”を大切にし、見る人の心に残る表現を追求。作品が新しい出会いと価値を生むことを目指して日々制作している。

 


 

セカンドブランドのロゴをデザイナーに依頼しようと思った理由を教えてください。

田和さん:
うちは1972年からやっていて、常連さんの中で“テンプル”のイメージがしっかりでき上がっているんです。だからブランドをどう見せるかなんて、これまで深く考えたことがなかった。でも時代が進むと価格競争に飲み込まれそうになってしまって。「このままじゃ店の価値が薄まる」と思ったんです。そこで既存とは別の、もうひとつのブランドを立ち上げたいと考えました。ただ、コーヒーのブランドデザインって難しくて、自分では差別化の手がかりが掴めなかったんですよね。そんな時にデザインUPプロジェクトのお話をいただいて「デザイナーに頼むタイミングだ」と感じました。

 

初めてお会いになった時、お互いの印象はどうでしたか?

田和さん:
正直に話すとね、最初は小越さんじゃないと思っていたんです(笑)。候補のデザイナーさんを見比べる中で、皆さんそれぞれデザインのレベルも高い。でも作品をじっくり見ていると、その方が所属している会社の“枠”の中で作られている印象がどうしても拭えなくて。それは悪い意味じゃなく、むしろブランドを守る上では強みでもあると思うんですが、僕が今回求めていたのは、既存のイメージから少し離れられる自由さだった。
一方で小越さんはフリーランス。だからこそ縛りが少なく、幅のある表現を引き出せるんじゃないかと感じました。実際、作品にいろんな空気が流れていて“この人ならいけるかもしれない”と可能性を感じた瞬間です。

小越さん:
不採用にならなくてよかったです(笑)。というのも、僕はこれまで基本的には個人的なつながりでお仕事をいただくスタイルだったので、こういう形で選ばれる経験がありませんでした。だから面談の時は結構緊張していたのを覚えています。
でもコーヒーがすごく好きということもあり、コーヒーのブランドデザインをやってみたいと思って応募しました。田和さんとお話した時、店の歴史もお客さんとの関係も、ひとつひとつ大切にしているのが伝わってきて、その“想い”にすごく惹かれたんです。だから採用いただいた時は、本当に嬉しかったです。

 

ブランド名はどのように考案されたのでしょうか?

小越さん:
僕、普段からコーヒーをよく飲むんですけど、意識してないつもりでも「だいたいこの時間に飲んでるな」っていう流れが自分の中にあって。だから今回のコンセプトが「時間」だと聞いた時、すごくしっくりきたんです。コーヒーって香りや味ももちろんですけど、“飲む時間そのもの”が記憶に残る飲み物なんですよね。
そこで、まずはブランド名にその感覚を落とし込めないかと考えました。最初に頭に浮かんだのが時計の針が「回る」というイメージ。そこから「回す」という言葉をさらに削ぎ落として「回(まわ)」だけにしてみたら、意味が限定されない言葉になっておもしろいなと。普通は聞いても何のことかわからないけど、だからこそ人によって連想が違う。響きも柔らかいし、余白がある。そこに可能性を感じて「MAWA COFFEE」という名前を提案しました。

田和さん:
コーヒーって、豆を焙煎する時も、粉をドリップする時も、深煎りの豆を撹拌する時も、何かしら「回す」工程が必ずある。店の仕事をしていると、気づかないうちに回す動作の連続で、コーヒーが完成するんですよ。
時間が回る、作業が回る、気持ちも回りめぐって戻ってくる。そう考えると「MAWA」は単に“回す”じゃなくて奥が深いなと。ブランド名が決まった瞬間、セカンドブランドの輪郭が一気に見えた気がしました。

 

 

ロゴデザインはどのように考案されたのでしょうか?

田和さん:

最初に「こういう雰囲気がいいな」という、ぼんやりしたイメージはあったんですが、それを言葉できちんと説明できるわけでもなくて。なのでロゴに関しては、ほとんど小越さんにお任せでした。実際に提出された案が、思っていた以上に多くて、まずそこで驚きましたね。

その中にひとつ、自分の中で「これだな」と思う、重厚感のあるデザインがあったんです。でも面白いことに、最終的に採用されたのは別の案でした。実はそれ、小越さんの奥さんが「これがいい」とおっしゃっていたデザインだったんです。

僕が気に入っていたのは、どちらかというとカッコいい印象のもの。一方で彼女が選んだのは、柔らかくて、少し可愛らしい雰囲気があって。今回のターゲットは女性なので、その直感は、まさにお客さんに一番近い視点なんだと気づきました。その瞬間に「このデザインでいこう」と腹が決まりましたね。

自分の好みではなく、ブランドとして誰に届くべきなのか。その視点を改めて意識できたきっかけになりました。

提出されたデザイン案の数々。

 

小越さん:

今回、デザイン案はテイストを大きく変えたものをいくつか提案しました。というのも、言葉だけでは方向性を決めにくい段階だったので、まずはを見せることが必要だと思ったからです。専門学校の生徒や、妻にも意見を聞いていたんですが、女性陣は全員一致で、最終的に採用された案がいいと言っていました。

ここまで男女で反応が違うことに驚きました。ちなみにロゴの中にちょっとした仕掛けがあって、「MAWA」を囲む線はくるくる回る動きを表しているんですけど、よく見ると上の線は「M」、下の線は「W」にも見えるデザインになっています。回すというコンセプトと、ブランド名の頭文字が自然と重なる形に落とし込んだアイデアです。気づいた時に「おっ」と思ってもらえたら嬉しいですね(笑)。

 

コンセプトの「時間」が表現されたラベルデザイン。

 

あらためてこうべ産業・就労支援財団のマッチングはいかがでしたか?

田和さん:
今回のマッチングを通じて、小越さんにお願いして本当に良かったと感じています。正直、デザイナーさんって自分の世界観が強くて、こちらの意見が反映されにくいんじゃないかという先入観があったんです。でも小越さんは、僕の言葉を丁寧に聞いてくれて、共感してくれて、その思いをデザインに落としてくれる。その姿勢に最初から最後まで感心しっぱなしでした。
ロゴを作る作業そのものが楽しい時間になりました。今回のマッチングがなければ、きっとこういう出会いは実現しなかったと思うので、この機会を作ってくださっって心から感謝しています。

小越さん:
僕にとっても、今回のロゴデザインは大きな経験になりました。田和さんとやり取りを重ねる中で、単に「形を作る」以上のことに触れられた気がします。
意思疎通は常に意識していました。僕が良いと思う案を押し付けるのではなく、田和さんとイメージを擦り合わせ、納得していただける形に整えていく。そのプロセスがとても刺激的でしたし、完成したロゴに喜んでいただけた瞬間は素直に嬉しかったです。

田和さん:
今回で終わりじゃなくて、これからも一緒に取り組めたらと思っています。店から新しい商品をもっと出していきたいですし、その時のパッケージデザインもぜひお願いしたい。ロゴだけじゃなく、ウチから生まれるものたちに小越さんの感性がどんどん乗っていってくれたら嬉しいです。ブランドが広がっていく未来が、今回の出会いから見えた気がします。


 

Coffee Temple:WEBサイト

https://coffee-temple-kobe.com/

 

小越 将吾さんプロフィールページ

https://kobecreatorsnote.com/creator/ogoshishogo