マッチング事例

2025.01.17

震災の記憶を未来へ繋ぐ、日本酒パッケージへの挑戦

優れた技術で包装ニーズに応える「日本テクノロジーソリューション株式会社」×斬新なアイデアでパッケージデザインを展開する「K note」

 

日本テクノロジーソリューション株式会社:

1976年創業。当初はブラウン管テレビの検査装置を主力商品として提供していたが、日本でブラウン管テレビが激減し、生産工場が終息する前の2001年に初の自社ブランド製品「熱旋風式シュリンク装置TORNADO®」を発売。“優れた技術を優れたビジネスに”をキーコンセプトに現在はパッケージ事業、メディア事業、アライアンス事業などの事業を行っている。

 

K note:

パッケージデザインを中心にグラフィックデザイン、キャラクターデザインなど幅広く手がける。日本パッケージデザイン大賞’91大賞及び特賞、’95JPC(社)日本印刷産業連合会長賞、2001山口きらら博マスコットキャラクターでグッドデザイン賞受賞、指名コンペで富山県射水市ブランディングマーク「ムズムズくん」採用などの実績あり。

 

STORY

兵庫県加西市に蔵を構える富久錦株式会社より阪神淡路大震災の年に仕込んだ熟成純米大吟醸「1995」のフィルムパッケージを託された日本テクノロジーソリューション株式会社。制作には自社のシュリンク包装技術とノウハウを用いることはもちろんのこと、思い入れの強い日本酒だからこそデザインが重要であると考え、兵庫県にゆかりのあるデザイナーにこだわっていた。そんな中、神戸市産業振興財団の「デザインUPプロジェクト」を通じて神戸クリエイターズノートに辿り着く。日本テクノロジーソリューション代表取締役社長の岡田耕治さんとK noteの奥田一明さん、曜子さん、こころさんにお話を伺った。

 

日本テクノロジーソリューション株式会社 代表取締役社長 岡田耕治さん

 

−富久錦さまより貴重なお酒を任せていただくことになったときの、お気持ちをお聞かせください。

岡田さん:当社では日本酒の企画・販売を行っておりますが、今回お受けした「1995」は強い願いが込められた特別な日本酒でした。このお酒は阪神大震災が起きた1995年1月17日に仕込み、30年間熟成させた純米大吟醸。日本人にとって深く記憶に刻み込まれた年から長い年月を経て貯蔵され、非常に価値の高い存在価値のあるお酒です。またこの日本酒には当時の想いはもちろんのこと、明るい未来を感じてほしいという祈りも込められているのです。このようにストーリーのある「1995」なので日本酒ラベルによくある和紙ではなく、今までにはない斬新かつ魅せるパッケージにしたいと思い、当社のシュリンク包装技術を活用したフィルム印刷を採用しました。またデザインは必ず地元にゆかりのある方にぜひお願いしたいと考えたのです。

1995年、阪神淡路大震災の年に仕込んだ熟成純米大吟醸「1995」

ボトルデザインはK noteの皆さま、外箱の「無限」は書家の紫舟さんが手がけられている

 

−神戸クリエイターズノートでデザイナーを採用された経緯を教えてください。

岡田さん:神戸に本社を移転したのが2018年。阪神大震災の日に仕込んだ日本酒を手がけるにあたり、パッケージデザインをリアルな震災体験がない私たちが表現できるかという懸念点がありました。社内で検討を重ねた結果、やはり神戸にゆかりのある、かつ震災を実際に体験したデザイナーさんにデザインを担当していただきたいという話になったのです。そこで神戸市産業振興財団に相談したところ、丁度、神戸クリエイターズノートとコラボしている「デザインUPプロジェクト」があって、派遣していただくデザイナーさんを公募で選定させていただきました。

※神戸クリエイターズノートに登録しているクリエイターは神戸市産業振興財団の「デザインUPプロジェクト」が公募するクリエイター派遣案件に応募することが可能。両者がコラボすることにより神戸クリエイターズノートが目指す“クリエイターの活躍の場を広げる”、「デザインUPプロジェクト」が目指す“企業のデザイン課題解決を後押しする”という想いを実現している。

 

−多数の応募があったと伺いましたが、K noteさんを選ばれた理由を教えてください。

岡田さん:30年間の月日の中でたくさんの想いが詰まった日本酒なので、それをしっかりとデザインできること。また次の30年後となる2055年へのメッセージも込めたいという想いもあったので、そちらを表現してくれる方であることが条件でした。もちろん実績などを拝見して検討材料にはさせていただきましたが、K noteの奥田さんには、富久錦さんと私たちの願いをカタチにしてくれるのではないかという直感を信じて採用させていただきました。

奥田さん:震災時は西宮に住んでいましたので、当時の気持ちや地元神戸の想いなど正直にお伝えしました。やはり震災を体験したということはとても深く心に残っています。デザインも大切だと思いますが、日本酒とその背景にあるストーリーに向き合いたいと切実に思いました。

 

K note 奥田一明さん

 

−初めてのデザイナーとのマッチングですが、スムーズに進行できましたか。心に残るエピソードなどがあればお聞かせください。

岡田さん:私の中で不安は全くなかったです。富久錦さんにも強い思いがありましたが、デザインに関してはお任せいただけるとのことだったので、私も基本的にはK noteさんに自由にデザインしていただきたいと思いました。ただ日本酒のコンセプト、震災復興への想いを表現してほしいとお願いし、あとは神戸らしさ、高級感があればいいなという希望は伝えました。

奥田さん:店頭に並ぶトレンド感ある日本酒のデザインを考えるのとは全く異なるので、岡田さんのおっしゃるコンセプトや想いをしっかり聞くことに集中しました。その後は3人(奥田一明さん、曜子さん、こころさん)で咀嚼して、各々の意見やアイデアをいろいろ出し合いました。様々な案は出ましたが、30年間のストーリーを受け継ぐという根底の気持ちは皆同じだったと思います。

こころさん:悩んだ点といえば、私の中で震災復興と高級感というイメージが真逆だったことです。復興というのはこれから盛り上げていこう!という元気な“赤や黄色”。高級感は格式高く重厚感のある“黒”。2人からも意見を聞き、結果的には型にハマらない自由な発想につながったのでよかったです。

 

K note 奥田こころさん

 

−デザインへの想いやこだわりをお聞かせください。

曜子さん:シュリンク素材で表現することは様々な制約があり難しいと思いましたが、細かいご指示がなく自由にデザインさせていただけたのはありがたかったです。1人ではなく3人のデザイナーが多種多様にアイデアを出し合うので、デザイン案はたくさん提出させていただきました。理由としては、各々のデザインを否定するのではなく、生かす方向性で進めていきたかったからです。また日本テクノロジーソリューションさまが富久錦さまをしっかりと取材されていたので、デザインの参考にもさせていただきました。“震災は非常につらいできごとだったけど、30年たった今、せめてお酒を交わしながら笑顔で過ごしてほしい”というメッセージが印象的だったので、それを受け継げるようなデザインを心がけました。

 

K note 奥田曜子さん

 

 

 

 

K noteの皆さんが制作されたデザイン提案の数々

 

−今までにない斬新な日本酒ボトルになりましたね。

岡田さん:“プレミアムなお酒”を表現するため「瓶ボトル×マットフィルム」となる難易度の高いシュリンク技術を活用しました。高級感溢れる黒マットを基調としたフィルムに「三十年酒」という箔押しで、金属の箔ならではの光沢を演出し、またボトル中央には「You’re unlimited」の文字を入れて無限の可能性というメッセージも込められています。「1995」は限定50本、2025年1月17日(金)から発売されています。うち30本は大丸神戸店お得意さま限定の会員制クローズドサイトにて、20本は酒輪公式サイトにて限定販売となります。

 

−今後の30年後を見据えて展望をお聞かせください。

岡田さん:日本酒の人気は昭和48年をピークに下降が続く中、海外ではリブランディングした日本酒が評価されていると聞きます。正直私は海外ではなく日本で日本酒の可能性を見出したいし、素晴らしい日本酒を展開していきたい。そのお手伝いを当社の技術を使ってできればと思います。

奥田さん:やはり私は今まで“モノづくり”が好きという想いでデザイナーをしているので、その気持ちを今後も持ち続けて、もっとアイデアを羽ばたかせる場所を作れたらと思います。個人的には絵本なども描いてみたいですが、K noteとしては3人の個性が光る唯一無二のデザインを育みながら、そのデザインを楽しめる会社でありたいと思います。

 

日本テクノロジーソリューション株式会社の過去のフィルム包装の実績

 

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